プロジェクト概要
国際共同研究の目的と目標
国際共同研究の目的(上位目標)
現在、熱帯林地域に設立されている国立公園で生物多様性の維持を図り、固有種の進化の歴史と生態系における役割を明らかにし、野生動物と人間との安全で持続的な接触を図りながらエコツーリズムの適正な運用を通じて人と自然との共生を推進することは、地球環境の保全のために緊急の課題となっている。
本研究プロジェクトは、生物多様性が高く固有種の多いガボン共和国ムカラバ国立公園で京都大学が蓄積してきた調査研究の実績を生かしつつ、熱帯林生態系の保全技術の創出、人と自然の適正な接触による環境保全型観光事業の創出を目的とする。ガボン政府はすでに資源開発型から資源保全型の観光事業へと国家政策の変更を表明しており、日本の高い知見と技術の協力によってそれがより具体的に実現することが期待される。
国際共同研究の成果目標(プロジェクト目標)
本研究プロジェクトは、これまで達成困難だった熱帯林諸国の生物多様性の高い森林保護区を科学的に保全・管理する技術と方法を考案し、保護区の地元住民の健康で安全な生活を保障しつつ経済発展をもたらす政策を、持続的で保全型の観光事業をもとに提案することを最終的な目標にしている。近年、人と野生動物との間に致死的な人獣共通感染症が広がることが大きな問題となっており、エコツーリズムの導入や新たな人と野生動物の共存を計画するに当たっては、人獣共通感染症の防止を図ることが不可欠となっている。
本計画はその防止のための調査と研究をあらかじめ盛り込み、人と野生動物が安全に接触し共存するためのモデルを提唱する。ガボンのムカラバ国立公園では、これまで日本人研究者によって生態系の特徴を把握する重要な資料が蓄積されており、環境保全への地元住民の積極的な協力が見込まれている。資源開発型から保全型観光政策へ転換したガボン政府も、エコツーリズムをベースにした保全事業の推進を将来の重要な国家政策を見なしており、科学技術開発省の熱帯生態研究所にも日本人研究者と協力してこれらの研究を実施する博士の学位をもつ若い研究者がそろっている。日本の高い知識と技術を投入して研究協力を行うために機は熟していると考えることができる。
本研究プロジェクトによってこれまでにない熱帯林保護区の科学的な保全・管理方法を立案することができれば、他の熱帯林諸国にも普及していく可能性が高く、地球規模の重要課題である熱帯林の保全を日本の主導によって大きく前進させることができると期待される。
研究内容
京都大学グループ
- 生物多様性の保全とエコツーリズムの実施、持続的な環境利用のための基礎研究を目的とする。
- ムカラバ国立公園に生息する動植物の種類と現存量に関する調査を実施し、その中でこの生態系を代表すると思われる標徴種を選定する。また、標徴種の遺伝的多様性を分析し、主として大型哺乳類と霊長類の生物間相互作用に関する調査を行って、優先的に保全すべき種と生態系を特定するとともに生態系マップを作成する。
- これまで人付けを続けてきたゴリラの1群に加えて新たに他のゴリラ1群、チンパンジーの1群を人付けし、これらの群れの遊動域に共存する他の霊長類も人付けする。
- 人付け作業と平行して、遊動域内にネイチャートレイルを設定し、ムカラバ国立公園の動植物を科学的に解説するガイドブックやエコツーリズムのメニューを作成するとともに、エコツーリズムのガイドを養成する。
- 国立公園に隣接する3村の地域住民による資源利用について調査を実施し、自然資源の持続的利用について検討するとともに住民に対する環境教育を実施することにしている。
中部学院大学グループ
- 気象、植物のフェノロジー、科学的エコツーリズム、環境教育のための基礎研究を目的とする。
- ムカラバ国立公園の植生図とGISデータをもとに公園内の植生についてその季節変動や年変動をモニタリングする方法を考案し、雨量、気温、日射量を毎日測定して気象や植生の特徴を分析する。
- この国立公園の動植物を代表する生態系を特定し、それを化学的科学的に解説できるようなネイチャートレイルを設定し、エコツーリズムに適切な生態系マップやガイドブックを作成して、博物館活動やエコツーリズムに従事できる人材を育成する。
- 博物館活動を通じて地域住民の環境教育を実施する。
山口大学グループ
- 野生動物と人間との接触状況に関する基礎研究を目的とする。
- ムカラバ国立公園における野生動物と人との安全な接触と適切なエコツーリズムの実施を図るために、人獣共通な病気の感染が危惧される霊長類を中心とした大型哺乳類と人間との接触状況に関する調査を行い、とくにエコツーリズムの主たる対象となっている類人猿の細菌、寄生虫、ウィルスに関する調査をガボン熱帯生態研究所との緊密な協力の下に実施する。
- 病原体の調査は京都府立大学生命環境科学研究科の牛田一成教授と協力して行うほか、人の感染症についてはガボンのフランスビル国際医学研究所の協力を得る。調査法や分析法についてはガボンから若い世代の研究者を日本へ招へいして研修し、野生動物と人間との安全で豊かな接触方法について検討し提案する。
- これらの研究成果を、エコツーリズムのガイドブックに記載する。